DTM用のキーボードでMPE対応といっているものが本当か確かめないと騙される件
MPE対応キーボード
間違いなくMPE対応しているキーボードはMPE規格を強く押し出しているROLIというメーカーのMPEのためのMIDIキーボード
Seaboard RISE 25などが該当機種です
気になる仕様は下記の内容にてROLIより発表されています
The remaining channels (usually Channels 2–16) are used to transmit notes and expressive data – including note-on velocity, pitch bend, channel pressure (aftertouch), CC74 (brightness), and note-off (release) velocity – on a note-per-channel basis. The expressive data will only apply to the note which is on the same channel.
訳すると
MIDIチャンネル 2-16を使用
ノートオン、ピッチベンド、チャンネルプレッシャー(アフタータッチ)、CC74、ノートオフベロシティを使用
鍵盤を和音のように複数押さえた時、上記の情報がチャンネル毎に送信されるということです
実際に対応を謳っているメーカーを見てみる
・Native Instruments SシリーズMK3
KOMPLETE KONTROLはまよったら買っとくMIDIキーボードというポジション(実はNKSという自動アサイン機能自体はそれほど使わない)
公式は下記のアナウンスをしています
MPE(MIDI Polyphonic Expression)は業界で広く採用されているMIDIプロトコルへの拡張機能で、個々のキーに追加の信号を送信することができる機能です。プラグインによっては複数の異なるMPEメッセージを受信できます。Kontrolキーボードにはポリフォニックアフタータッチ機能が備わっているため、ポリフォニックアフタータッチ信号を受信できるMPEプラグインと互換性があります。
MPEについては対応するブラグインであればMPEの受信に対応していると記載
これはこのMIDIキーボードのことをさしておらず、あくまでプラグインというソフトウェア側のお話
ハードウェアとしてはポリフォニックアフタータッチ送信のみに対応
書き方がずるいです()
受信という観点はMIDI送信するハードウェアについての説明になりません
「MPEには対応していないけれどボリフォニックアフタータッチには対応している」
が正しい説明かと
・KORG Keystage
優れたタッチレスポンス、ポリフォニック/チャンネル・アフタータッチ、MPE(MIDIポリフォニック・エクスプレッション)等を備えたKeystage
とメーカーページに記載あり
実際に仕様を見ると?
木材(メープル)ベロシティ感度、アフタータッチ、ポリフォニックアフタータッチ搭載
ベロシティカーブ:21 (—10–0–+10)
オクターブ範囲:7 (—3–0–+3)
鍵盤項目にCC74やピッチベンドの記載なし
MIDIインプリメンテーションチャートでは
| 8n | kk (kk) | XX (XX) | Note Off (Keyboard) |
| 8n | kk (kk) | 40 (64) | Note Off (Button, Encoder) |
| 9n | kk (kk) | VV (VV) | Note On (Keyboard,Button,Encoder) |
| An | kk (kk) | vv (vv) | Polyphonic Key Pressure (Keyboard) |
| Dn | vv (vv) | | Channel Pressure (Keyboard) |
| Bn | cc (cc) | vv (vv) | Control Change *1 |
| Cn | vv (vv) | | Program Change (Pedal 1, Pedal 2, Button)|
| En | vv (vv) | vv (vv) | Pitch Bend (Pitch Wheel) |
と記載
この通りであればピッチベンドはピッチベンドホイールでしか送信できなさそう
コントロールチェンジは*1: Pedal 1, Pedal 2, Mod Wheel, Knob, Button, Encoderに対してのみ反応
4 | AT Mode | 0‾3 = Off/Channel/Polyphonic/MPE
モード切り替えにはMPEの存在があることを確認
説明書は下記の記載
本機の鍵盤は、ノート・オン/オフやベロシティに加え、鍵盤の押し込みによるコントロール(アフタータッチおよびMPE)に対応しています。
演奏や操作の情報は、グローバルMIDIチャンネル(送受信の基本となるMIDIチャンネル)から送信さ れます。 鍵盤の押し込みによるコントロールは、初期状態でポリフォニック・アフタータッチに設定されてい ます。
グローバルMIDIチャンネルやアフタータッチの設定はセッティング画面で変更できます。
Tip: KORG Kontrol Editor を使って、鍵盤やノブ、モジュレーション・ホイールなどのコントローラーに それぞれ MIDI チャンネルを設定できます。詳しくはコルグ・ウェブサイト (www.korg.com) をご覧く ださい。
Tipの鍵盤にMIDIチャンネル設定できるという記載は気になりますね
MPE(MIDI Polyphonic Expression)
本機はMPEのプレッシャー(鍵盤の押し込み)に対応しています。MPE使用時は、本機の各鍵盤が個 別のMIDIチャンネルに分割され、それぞれのサウンドに独自のプレッシャー・コントロールができま す。MPEを使用するには、MPEに対応した音源が必要です。
説明書によるとMPEに対しては個別のMIDIチャンネルとして動作するプレッシャーコントロールと記載
- チャンネル・アフタータッチ(チャンネル・プレッシャー) チャンネルごとに一つのアフタータッチがかかります。どの鍵盤を押してもサウンド全体が変化 します。
- ポリフォニック・アフタータッチ(ポリフォニック・キー・プレッシャー) 鍵盤ごとに独立したアフタータッチがかかります。それぞれの押し込む深さによって効果のかか り方を変えたり、演奏した和音の1音だけにアフタータッチの効果をかけたりできます。
アフタータッチとの違いを見ても微妙ですね…
Keystage-49:Polytouch鍵盤*、49鍵 Keystage-61:Polytouch鍵盤*、61鍵 ベロシティ、アフタータッチ、ポリフォニック・アフタータッチ対応
ベロシティ・カーブ:21(-10~0~+10)
オ ク タ ー ブ ・ レ ン ジ : 7( – 3 ~ 0 ~ + 3 )
説明書のラストには上記のように記載
Polytouch鍵盤とかいう紛らわしいワード!
長々と書きましたが、ROLIが定めるMPEには対応していないということです
まるでちゃんとMPE対応といっているメーカーは自重しましょう
上記の通りMPEというワードがでてきたから対応と考えてはいけません
受信のみ対応だったり、ポリフォニックアフタータッチにのみ対応というパターンばかりです
HYDRASYNTHもこのパターンに当てはまります
MPE受信モードがあり、MPEのポリフォニックアフタータッチにのみ対応しているというものでした
※実機で触ってみて最終的に海外フォーラムで確認
ROLIが提示している
MIDIチャンネル 2-16を使用
ノートオン、ピッチベンド、チャンネルプレッシャー(アフタータッチ)、CC74、ノートオフベロシティを使用
という鍵盤仕様であって初めてMPEの有効的な演奏方法が生まれます
ポリフォニックアフタータッチにしか対応していないのであれば古くからある鍵盤のひとつであり、MPE対応とは言えません
まとめ
HYDRASYNTHから始まったMPE研究
結論はなんとメーカーのぼかした表現による未対応オチ
HYDRASYNTHは確かにMPEのCC74やピッチベンドを受信した際、どう反応するか設定できるのでハーフ対応(別のMPE鍵盤でHYDRASYNTHをMPE音源として演奏できる)といってよいのですが、それでもそのように記載するべきです
まるで完全対応のように記載するのは如何なものかと…
MPE自体がブームにならないため大きな問題になっていない気配ですが、紛らわしい記載は避けて欲しいですよね!
現時点ではMPE機能使いたいならROLIのMPE対応鍵盤が間違いないという結論も付け加えておきます